珈琲プリンスと苦い恋の始まり
岩の上をじっと見つめ、窺うように佇んでる。 

何を見てるんだろうか、と少し気になってしまったが__。


(知らん顔しておこう。付いて来たいと言ったのは向こうなんだし)


私は私で撮りたいものが見つかるまでウロウロしておこう。
そのうち日も沈みだすから、そしたら今日は夕日を撮ればいいや。


夕日を背に何か一緒に撮ろうかな…と思った。
何がいいかな…と考えてると、この先に海鵜が集まる岩礁があるのを思い出した。


そこへ行こうと大きく足を前に出す。岩から滑っては大変…と緊張しながら上に登ると……


「…ねぇ、ちょっと聞いてもいいか?」


さっきまで岩の上に佇んでた相手が、すぐ近くの岩の辺りまで来て声をかけた。
「え?」と驚いて振り向き、彼を眼中に入れる。

彼はでこぼこの岩の上に立ち、何とかバランスを保ってる雰囲気で息を少し切らしてた。


「岩の上に海水が溜まってる場所が点々とあるだろう。あの中にいる黒い気持ちの悪そうな生き物は何だ?」


ほら、此処にもいる…と指差し、気色悪っ…と言っている。
面倒くさい人だと思いつつも、一旦は登った岩の上から下りて近付いた。


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