珈琲プリンスと苦い恋の始まり
煙幕の様なものなの…と話すと、またしても「へぇー」と唸る。

一々感心してばかりいるな…と呆れるけど、彼でなくてもアメフラシの生体を知らない人はそんなもんか…と思い直した。


やれやれ…と膝を伸ばして立ち上がろうとした。でも、その瞬間、彼が潮溜まりの中に手を入れてアメフラシを掴んで引き上げたから驚いた。



「……気持ち悪くないの?」


さっきは気色悪いとか言ってたくせに。


「ああ…別に。ちょっとヌルッとしてるけど、想像以上に弾力があって面白い」


外見はナメクジと大差ない…と言ってる。
海の中に住んでるか陸の上にいるかくらいの違いだろ…と話すもんだから、全く別の種類の生き物だと教えた。


「アメフラシは貝の一種で、ナメクジはカタツムリの貝殻が退化した生物だから別種よ」


父から教わったことを話すと目を丸くしてる。
それからアメフラシと私を見比べて、「へぇー」と再び唸った。



「君は博識だな」


恐れ入ったとばかりに溜息を吐く。
こっちはそんな彼に呆れながら膝を伸ばし、水平線を振り返った。


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