珈琲プリンスと苦い恋の始まり
離れがたい人
『White moon』に着いた私は、庭の一角に目をやる。
嘗てその場所にあったものを思い出して空を見上げ、闇に包まれ始めた空間を眺めた。
見渡しの良くなった空を見つめながら、あの頃とは違うと認識する。途端に小さな溜息が漏れ出して、諦める様な気持ちで家屋の方へと目を配った。
本当は珈琲なんて飲む気もなかったんだけど、この家の中に入ってみたくてやって来た。
中の雰囲気に浸りたくて、彼の誘いを断りきれなかった。
足を伸ばして家の中に繋がる引き戸をスライドさせると、カウンター内に立つ彼が気づき、ふわっと笑みを溢した。
「やっと来た。あのまま帰ったかと思ったよ」
どうぞ…とカウンター席を指差し、私は無言で店の中に入る。店内には淹れたての珈琲の香りが漂い、それをスーッと鼻の奥に吸い込んだ。
促されるままにカウンターチェアに座った私の前に、彼が淹れた珈琲が置かれる。
ソーサー付きのカップではなく、民陶みたいなマグカップに入ってて、何となく素敵な感じだと感心した。
「そのまま飲んでも苦くはないと思うんだけど、もしも苦かったらブラウンシュガーを入れてみて」
嘗てその場所にあったものを思い出して空を見上げ、闇に包まれ始めた空間を眺めた。
見渡しの良くなった空を見つめながら、あの頃とは違うと認識する。途端に小さな溜息が漏れ出して、諦める様な気持ちで家屋の方へと目を配った。
本当は珈琲なんて飲む気もなかったんだけど、この家の中に入ってみたくてやって来た。
中の雰囲気に浸りたくて、彼の誘いを断りきれなかった。
足を伸ばして家の中に繋がる引き戸をスライドさせると、カウンター内に立つ彼が気づき、ふわっと笑みを溢した。
「やっと来た。あのまま帰ったかと思ったよ」
どうぞ…とカウンター席を指差し、私は無言で店の中に入る。店内には淹れたての珈琲の香りが漂い、それをスーッと鼻の奥に吸い込んだ。
促されるままにカウンターチェアに座った私の前に、彼が淹れた珈琲が置かれる。
ソーサー付きのカップではなく、民陶みたいなマグカップに入ってて、何となく素敵な感じだと感心した。
「そのまま飲んでも苦くはないと思うんだけど、もしも苦かったらブラウンシュガーを入れてみて」