珈琲プリンスと苦い恋の始まり
それを不思議に思ったらしい。
何処まで好奇心が旺盛なんだと呆れ、簡単に理由を言った。


「仕事をしないと生きてけないでしょ。同じ働くならお金もある程度欲しいし、何より誰かの役に立てるのなら生きてる意味もあるから」


看護師でなくても別に良かったんだ。
だけど、私の頭の中には、既に亡くなった人達のことがあった。

その人達の為に生きようと決めた。
生きてる間にしてやれなかったことを、他の人達にしてあげたいと考えたんだ。

それで進路を決める時に看護学校を選んだ。
確実に稼げて親にもお金が返せると踏んだから。



「ふぅん…感心だな」


唸ると彼は自分のカップを手にして珈琲を飲む。

外見は整った顔立ちの彼が珈琲を飲む姿は様になってて、不覚にも(カッコいい…)と思ってしまった。



(馬鹿、何考えてんの!)


自分の思考に恥ずかしくなり、ふいと目を背ける。
さっきまではしんみりとした気持ちでいたのに変だと思い、ゴクゴクと珈琲を呷った。


「ご馳走さま!」


トン!と勢いよくカウンター上にマグカップを置くと、帰ろうとして体を横に向ける。

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