珈琲プリンスと苦い恋の始まり
彼に背中を向けて椅子から滑り降りようとしたら、「ねぇ…」と声をかけられた。


くるっと振り向き彼を視界に入れる。
整った顔立ちをしてる人は私を見直すと微笑み、「また店においでよ」と声をかけた。


「前にも言ったけど、君に興味があるんだ。撮った写真も見せて欲しいし、なんて言うか君のことをもっと知りたい。
…あっ、だけど別に変な意味じゃないからね。単純にファンになったって感じだから」


君の撮る写真の…と付け足し、私は流石に笑い出してしまった。



「ファン?」


聞いたことない、と言うと大真面目に「じゃあ俺がファン一号だな」と言ってくる。
その言葉にも大いに呆れ、「好きにすれば?」と言い返した。


「私がこの店に来るかどうかも分からないよ」


来たい思う気持ちを押し隠して強がる。

彼はふんわりと微笑むと「それでもいいから待ってる」と話し、「来たらまた美味い珈琲をご馳走する」と続けた。


「だからいつでもいいから来いよ」


砕けた感じで誘い、私はそれに答えず肩だけを上げて誤魔化した。

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