珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「人間が嫌いか…」


彼女の車を見送った後、ボソッと独り言を呟く。
彼女が店の中で話した言葉は、全部本心なんだろうか。


「それなら、やっぱりどうして看護師なんだ」


働かないと生きていけないでしょ…と彼女は言ってた。
同じ働くならある程度の収入も欲しいし、何より誰かの役に立てるなら生きてる意味もある…と。


「それって、つまりは人が好きだってことじゃないのか?」


デイサービスセンターで働く彼女の姿を思い出し、人間嫌いが看護師になるのか?と再度懸念を抱く。

人間が嫌いで対人する仕事が務まるのか?と思い、嫌いならもっと別の仕事をするんじゃないのか?と考えた。


それこそ機械や物を扱う仕事でもいいわけだ。
あんなわざわざ手の掛かりそうな高齢者を相手にしなくても。


「よく分からねぇな」


やっぱり何処か不思議な女性だ。
何を考えてるのか、サッパリ謎な感じがする。


「おかげでまた興味が湧いたって言うか。もっと彼女を知りたくなったじゃないか」


横顔や後ろ姿を取る理由は何となく分かった。
だけど、結局、副業のネーミングについては答えて貰えなかった。


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