珈琲プリンスと苦い恋の始まり
梨華には多分私の気持ちを理解することなんて難しいだろうと思い、それ以上は話をぶり返さず、それじゃまた明日ね…と別れた。


職場の友人として仲良くしてる梨華にも、私は芯から心を開いているとは言い難い。
プライバシーを詳しく教えたこともないし、彼女のことも詳しく知りたいとは思ってない。

それは別に梨華だけではない。
相手が誰でも、自分の中に踏み込んできて欲しくないんだ。


(だから、勝手に興味を持たれても困るんだけど……)


昨日一緒に珈琲を飲んだ相手を思う。
あんな都会から来た人に興味を持って貰えるような自分じゃないのに。


そんな特別なことをしている訳でもないのに、彼はどうして私に近付こうとするの?


(やっぱりあれがマズかったのかな。桜のことで店に怒鳴り込んで行ったのが)


春先の日を思い出して、しまった…と反省。
だけど、あれだけは無くさないでいて欲しかったから……。


脳裏に浮かぶ白く咲き乱れる花を思い出すと気が沈む。
あれがあればこそ、何とか気持ちを奮い立たせて生きてこれたのに。


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