その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ
男運の無さ


『今まで出会ったどんな女性よりも君が好きだ。愛している。いつか必ず結婚しよう』



ーー知り合ってから三週間、付き合ってからはまだ一週間しか経っていない男性から言われたその言葉を、私だって完全に鵜呑みにしていた訳じゃなかった。

だけど嬉しかったんだ。

〝今度こそ〟素敵な男性に巡り会えたと疑わなかったし、彼のことは既に大好きになっていたから。


柄にもなく、ウェディングドレスを身に纏う自分の姿を想像したり、彼の苗字に自分の名前を当てはめてみたり、更には家族や友達に『今の彼と、案外早くゴール決めちゃうかも』なんて報告までしてしまっていた。



しかし、その甘い言葉を送られた翌朝、自分のベッドで目覚めた私は愕然とする。


夜を共にした彼の姿はどこにもなく、代わりに視界に飛び込んできたのは、あちこち荒らされた形跡のある私の部屋。

財布、通帳、印鑑、キャッシュカード、クレジットカード、おまけに腕時計やイヤリングまでもが全て盗まれていたのだ。


やられた。

普段は滅多に泣かない私だけれど、あの時はさすがにボロボロになるまで泣き崩れた。



それが二年前。

あれ以来、もう恋はしない! と心に固く決め込んだのだった。
< 1 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop