その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ
どのくらいの間、そのまましゃがみ込んでいただろうか。多分、そんなに長い時間ではないと思うけれど、その間、課長はずっと私の隣にいてくれた。
気が付いたら随分体調は回復して、顔を上げることが出来た。恐らく、歩くことも出来る。
「もう大丈夫そうです。ありがとうございました」
そう言って、ゆっくりと立ち上がる。うん、目眩もないし問題ない。
「そうか。顔色も良くなったし、帰れそうだな」
言いながら課長も同じように立ち上がる。
携帯を見ると、まだそこまで急がなくても終電には充分間に合う時間だったので、私と課長はゆっくりと歩いて駅まで向かった。