その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ
そうこう話していたら、電車が駅で停止した。
「ほら、降りるぞ」と彼に促され、私の方が彼についていくような形となりながら、二人で電車を降りた。
結局、課長に家まで送ってもらうことになった。
家までの道のりを二人並んで歩きながら「いつもこんな暗い路地を通って帰っているのか?」と課長から心配された。普段は十八時前後に帰ることが多いからそこまで心配することはないのだけれど、最近変質者の噂も聞くし、こうして送ってもらえてやっぱり安心する。
一人暮らししているアパートの前に到着すると、「本当にありがとうございました」と課長に頭を下げる。
「そんなこと気にするな。あ、一つだけ。お礼にという訳ではないが、近くに泊まれそうな場所があったら教えてくれ」
ホテルじゃなくてネカフェとかでいーや、と課長は言うけれど、この辺りは辺鄙すぎて、ホテルもネカフェも何もない。
でも、このままじゃ課長が一晩困ってしまう。
そもそもこうなったのは何もかも私が原因だ。
だから……
「あの……」
お互いにお酒が入っているから、というのもあるかもしれない。シラフの私だったら絶対にこんなことは言わないのだけれど……
「私の部屋に泊まっていきませんか?」
大胆発言とも取れる提案をすると、課長は一瞬、丸い目を見開き、きょとんとした顔で私を見つめる。
う……やっぱり変なこと言ってしまったかな。でも、このままだと課長が今晩困ってしまうし……。
気まずい空気に耐え切れず、何か言おうと口を開きかけたその時。
「……普段だったら、部下の女性社員の家に泊まっていくなんて絶対にしないけど……」
「え?」
「お互い酒に酔ってるせいにするか」
それはつまり……
「は、はい」
私は彼をアパートへと案内する。
良かった。これで彼の寝床は確保した。
私達の間に限って何か過ちが起こる可能性はないし、他の社員達には黙っていればバレることはない。
「ほら、降りるぞ」と彼に促され、私の方が彼についていくような形となりながら、二人で電車を降りた。
結局、課長に家まで送ってもらうことになった。
家までの道のりを二人並んで歩きながら「いつもこんな暗い路地を通って帰っているのか?」と課長から心配された。普段は十八時前後に帰ることが多いからそこまで心配することはないのだけれど、最近変質者の噂も聞くし、こうして送ってもらえてやっぱり安心する。
一人暮らししているアパートの前に到着すると、「本当にありがとうございました」と課長に頭を下げる。
「そんなこと気にするな。あ、一つだけ。お礼にという訳ではないが、近くに泊まれそうな場所があったら教えてくれ」
ホテルじゃなくてネカフェとかでいーや、と課長は言うけれど、この辺りは辺鄙すぎて、ホテルもネカフェも何もない。
でも、このままじゃ課長が一晩困ってしまう。
そもそもこうなったのは何もかも私が原因だ。
だから……
「あの……」
お互いにお酒が入っているから、というのもあるかもしれない。シラフの私だったら絶対にこんなことは言わないのだけれど……
「私の部屋に泊まっていきませんか?」
大胆発言とも取れる提案をすると、課長は一瞬、丸い目を見開き、きょとんとした顔で私を見つめる。
う……やっぱり変なこと言ってしまったかな。でも、このままだと課長が今晩困ってしまうし……。
気まずい空気に耐え切れず、何か言おうと口を開きかけたその時。
「……普段だったら、部下の女性社員の家に泊まっていくなんて絶対にしないけど……」
「え?」
「お互い酒に酔ってるせいにするか」
それはつまり……
「は、はい」
私は彼をアパートへと案内する。
良かった。これで彼の寝床は確保した。
私達の間に限って何か過ちが起こる可能性はないし、他の社員達には黙っていればバレることはない。