その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ
もう恋愛はしないから
「ただいま戻りました」
営業車のキーを所定の鍵掛けに戻してから、営業課の自分のデスクに腰をおろす。
「おう、幹本(みきもと)。お帰り」
パソコンから顔を上げてそう返してくれたのは、正面の席に座る、二期上の先輩の河野(こうの)さんだ。
本人曰く、ラグビーで日焼けした肌がチャームポイントらしい彼だけれど、彼の魅力はその肌よりも、体格の良い男らしい身体付きと、愛妻家であり、三歳の息子を可愛がる優しいパパキャラーーなのだと、以前、事務課の女性達が言っていた。
確かに、若手の営業職をいつも気に掛け、まとめてくれる優しさがあり、家庭だけではなくこの営業課においてもパパキャラでもある。
「今日の外回りはこれで終わりか?」
パパーーじゃなかった、河野さんにそう尋ねられ、私は営業バッグの中から書類を出しながら「あと一件残ってます」と答える。
「あと一件? どこに行くんだ?」
「高城コーポレーションの役席を口説き落としに」
そう答えると、河野さんは「ふはっ」と楽しそうに笑い出す。
「何がおかしいんですか?」
「いや、悪い悪い。確かに、高城コーポと契約が結べれば超大口ゲットだもんな。気合を入れて口説き落としてこい。……ただ、幹本なら別の意味でも口説き落とせそうだなと思ったら、つい」
彼の言葉に、私はあからさまに眉を潜めてみせる。
「それ、どういう意味ですか?」
「ああ、悪い。怒るなって。だって、高城コーポの役席っつったら、幹本にメロメロって専らの噂なんだもんよ。笑顔が可愛いスレンダー美女だって」
営業車のキーを所定の鍵掛けに戻してから、営業課の自分のデスクに腰をおろす。
「おう、幹本(みきもと)。お帰り」
パソコンから顔を上げてそう返してくれたのは、正面の席に座る、二期上の先輩の河野(こうの)さんだ。
本人曰く、ラグビーで日焼けした肌がチャームポイントらしい彼だけれど、彼の魅力はその肌よりも、体格の良い男らしい身体付きと、愛妻家であり、三歳の息子を可愛がる優しいパパキャラーーなのだと、以前、事務課の女性達が言っていた。
確かに、若手の営業職をいつも気に掛け、まとめてくれる優しさがあり、家庭だけではなくこの営業課においてもパパキャラでもある。
「今日の外回りはこれで終わりか?」
パパーーじゃなかった、河野さんにそう尋ねられ、私は営業バッグの中から書類を出しながら「あと一件残ってます」と答える。
「あと一件? どこに行くんだ?」
「高城コーポレーションの役席を口説き落としに」
そう答えると、河野さんは「ふはっ」と楽しそうに笑い出す。
「何がおかしいんですか?」
「いや、悪い悪い。確かに、高城コーポと契約が結べれば超大口ゲットだもんな。気合を入れて口説き落としてこい。……ただ、幹本なら別の意味でも口説き落とせそうだなと思ったら、つい」
彼の言葉に、私はあからさまに眉を潜めてみせる。
「それ、どういう意味ですか?」
「ああ、悪い。怒るなって。だって、高城コーポの役席っつったら、幹本にメロメロって専らの噂なんだもんよ。笑顔が可愛いスレンダー美女だって」