その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ
【だって、幹本さんが迷惑って言うから】

えっ……と、言葉に詰まる。
確かに、そういう類のメッセージを送ったけれど。


「あの、私そういうつもりじゃ……」

何とかそう答えると、電話の向こうからは何故か課長の笑い声。「課長?」と問い掛けると……


【ごめんごめん、幹本さんのこと困らせたくて嫌な言い方した】

「え……」

【さすがに俺も、三日連続は迷惑だろうなって思ってやめといた】

「そ、それなら何でケーキをわざわざ……」

【だって、甘い物好きなんだろ?】


それで、わざわざ……?
お礼してくれるなら、別に今日じゃなくても良かったのに……。


課長の家は反対方向なのに、仕事終わりで疲れてる中、私の為にケーキを届けに来てくれた……。
私の為。それは間違いない。

そのことが何故か、


凄く凄く凄く凄く


嬉しいと感じている自分がいるーー。



それに、課長に会えなくて残念って思っていることにも気付いた……。



通話が終わった後、ケーキは有難くいただくことにした。

甘い甘いクリームが、いつまでも私を幸せな気持ちにさせる。


私……



課長のこと、好きになってしまったみたいだ。
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