その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ
恋愛対象外の自分
それから一ヶ月が経過した。

私と課長の仲は進展……


する訳もなく、何も変わらない。


あれ以降は家に泊まりに来ることもないし、ただの上司と部下の関係。

だけど、仕事終わりにたまに携帯にメッセージを送ってくる。いつか見た、妙に可愛いクマのスタンプと共に。

そんなことがあるから、柄にもなくこの恋心を封印出来なくて……。

もう恋はしないって決めたはずなのに、知り合ったばかりの上司をあっさりと好きになり、その気持ちが膨らむ一方だなんて……自分らしくない。



ーーでも、アタックの仕方なんてわからないしなあ。

今までの恋愛は、相手から告白してもらってから始まるものばかりで、よく考えたらこうして自分から誰かを好きになるのって初めてかもしれない。


だから余計にどうしたらいいのかわからない……そんなことを考えながら、私は社員食堂で蕎麦を食べていた。



「ここ、座っていいですかぁ?」

定食のプレートをテーブルに置きながら向かいの席に座ったのは、事務課の島月さんという後輩の女の子だ。

確か私より二つ年下の彼女は、三ヶ月前にうちの店に異動してきた子だ。

茶色に染めたロングヘアはパーマがかかっていて、仕事中は一つに束ねている。
メイクは毎日バッチリ決められていて、睫毛は長く、目力が凄い。
私服や持ち物は高級そうなものが多く、女子力が高い子だなーっていつも思っていた。
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