その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ
飲み会当日。

営業課と事務課の合同の飲み会といっても、武宮課長と飲みたい女性達が企画した軽いノリの飲み会だ。もちろん強制参加ではないから、全員は揃っておらず、参加しているのは営業課から六名、事務課から六名。

席はくじ引きで適当に決められた。

私は入り口に近い端の席で、課長はテーブルを挟んだ側の、入り口からは離れた席。

席を移動せずに会話するには離れ過ぎた席だけれど、きっと多少話すくらいのチャンスはあるだろうと思いながら、幹事の音頭に合わせて乾杯した。


個室だから人目を気にすることもないし、元々社員同士は仲が良い為、空気はすぐに盛り上がる。

私も程良く酔いが回ってきて、楽しい気分になってきた、その時だった。


「そう言えば、幹本さんと武宮課長って、あれからどうなったんですかー?」


……突然降ってきたその言葉に、私だけでなく、その場にいた全員が「え?」と言葉に詰まり、空気が鎮まる。

発言したのは島月さんだった。

この妙な空気感に気付いているのか気付いていないのかはわからないけれど、島月さんは生ビールの入ったジョッキを片手に言葉を続ける。


「付き合ってるんですか? それとも何にもない? どちらにせよ、せっかく皆揃ってるんだから報告した方が良くないですか?」


何を……言い出すんだろう、この子……。


戸惑う私の代わりに河野さんが、


「いやいや、島月さん何言ってんの? 課長と幹本はそんな関係じゃねえよ?」


と言ってくれるけれど。
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