その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ
新たな恋?
月曜日。いつも通りの時間に出勤してきた私を見て、河野さんが目を丸くした。
「幹本、どうしたその髪」
河野さんが驚くのも無理はないかもしれない。
ずっとロングヘアだった髪を、ボブヘアにばっさり切ってきた私がまるで別人の様に見えたのだろう。
「ただのイメチェンです」
本当はイメチェンというより、気分転換なのだけれど。
別に、課長のことを想って伸ばしていた髪ではないけれど、失恋した時は髪を切ってさっぱりするべきだと思った。
実際にさっぱりしたかどうかは自分でもよくわからないけれど、何もしないよりはマシだったと思う。
「おはようござーーあ、幹本さん! 短い髪も似合いますね! ていうか、そっちの髪型の方が絶対似合いますよ!」
相田君が、出勤早々そんな風に褒めてくれる。
声が大きいので少し恥ずかしいけれど、直球で染められて悪い気はしない。
すると、右隣の席に人が座る気配を感じる。
振り向かなくてもわかる。その気配の主は課長だ。
「幹本さん、おはーー」
課長は、相田君とは違い、私の髪を見るなり目を見開いて固まった。
何をそこまで驚いているのか。自分のせいで私が髪をバッサリ切ったとか思っているのだろうか。別にそういう訳ではないのでそこは気にしないでもらいたい。