その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ
食堂でお昼を食べた後、営業室まで戻ってくると、課長と事務課の女性社員が二人で書庫室の方へ入っていく様子を目撃する。
その姿がとても親密に見えて、胸がざわつく。
つい無意識にーーこっそり後をつけて書庫室の物陰に隠れてしまった。
でも、私が心配するようなことは何もなく、必要書類の入っているファイルの場所の確認をしているだけで、用が済んだら二人はすぐに営業室へと戻っていった。
さすがに一緒に書庫室から出ていく訳にはいかず、私は身を潜めたまま、しばらくその場でやり過ごす。
……バカみたい。課長が他の女性社員とちょっと話していたくらいで思わずこんなに反応してしまった。
課長のことなんて忘れようとして、髪まで切ったのに、全然忘れられてない。
自分がこんなに未練がましい人間だったと初めて知り、どうしようもなくただボーッとしていると、書庫室の戸が外からガチャッと開き、誰かが入ってくる。
驚いて、思わずバランスを崩して物陰から出てしまう。
てっきり、課長が戻ってきたのかと思ったのだけれど、
「あれ? 幹本さん」
そこにいたのは相田君だった。