その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ
たわいない話をしながら、映画を観たり、ショッピングをしたりした。
途中、カフェでお茶をした時に、彼から「由梨さん、楽しいですか?」と聞かれたから、私は「楽しいよ」と答えた。それは嘘なんかじゃなかった。
日が暮れてきた頃、私達は特に行き先も考えずに街中を歩いていた。
すると、不意に彼が足を止め、私のことをじっと見つめる。
どうしたんだろう、と思いながら私も同じく立ち止まり、彼を見つめ返す。
すると突然、彼の顔が私にぐいっと近付いてきた。
ーーキスされる。
反射的にそう思ったのと同時に思い出したのは、先日の課長からの突然のキス。
咄嗟に。反射的に。
私はまるであの時のキスを庇うように、バッと俯いて顔を逸らした。
しまった、と思いながらゆっくりと顔を上げて相田君と視線を合わせると、彼はきょとんとした顔で私を見ていた。
「あの、ごめん、私ーー」
「すみません。由梨さんの睫毛にゴミが付いていたので取ろうと思ったんですが、驚かせてしまいましたね」
「え?」
ゴミ? キスじゃなくて?
自分が勘違いしていたことに気付き、顔がカァッと熱くなるのを感じる。
「あはは、ほんとごめん……私ーー」
「キスされると思って、嫌がったんですよね?」
あまりにもあっさりと言い放たれたから、私は戸惑う。
そんな私に、彼は困ったように、そして切なそうに笑う……。
途中、カフェでお茶をした時に、彼から「由梨さん、楽しいですか?」と聞かれたから、私は「楽しいよ」と答えた。それは嘘なんかじゃなかった。
日が暮れてきた頃、私達は特に行き先も考えずに街中を歩いていた。
すると、不意に彼が足を止め、私のことをじっと見つめる。
どうしたんだろう、と思いながら私も同じく立ち止まり、彼を見つめ返す。
すると突然、彼の顔が私にぐいっと近付いてきた。
ーーキスされる。
反射的にそう思ったのと同時に思い出したのは、先日の課長からの突然のキス。
咄嗟に。反射的に。
私はまるであの時のキスを庇うように、バッと俯いて顔を逸らした。
しまった、と思いながらゆっくりと顔を上げて相田君と視線を合わせると、彼はきょとんとした顔で私を見ていた。
「あの、ごめん、私ーー」
「すみません。由梨さんの睫毛にゴミが付いていたので取ろうと思ったんですが、驚かせてしまいましたね」
「え?」
ゴミ? キスじゃなくて?
自分が勘違いしていたことに気付き、顔がカァッと熱くなるのを感じる。
「あはは、ほんとごめん……私ーー」
「キスされると思って、嫌がったんですよね?」
あまりにもあっさりと言い放たれたから、私は戸惑う。
そんな私に、彼は困ったように、そして切なそうに笑う……。