その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ
「大体それは、課長が私の気持ちを笑い流すからじゃないですか!」

「だからそれを謝ってるだろ」

「謝れば何言ってもいいんですか! 私が、私が……どんな気持ちで……!」


確かに、自分の口から想いを告げた訳じゃない。
だけど、私が課長のことを好きであることに間違いはなかった。
それを笑われた。有り得ないって言われた。
謝って済むなら私だってあんなに傷付かなかった。


駄目だ。思い出すだけで泣きそうになる。課長が何を考えているか、未だによくわからないし。

どんどん俯きがちになる私に、課長は。


「だから、それは誤解なんだって」

「誤、解……?」

私は顔を少し上げて課長を見つめる。


「あんなの、本音で言った訳じゃない。だから泣かせるつもりもなかった」

「本音じゃない……?」

「まあ、君もご存知の通り、俺は女性にかなりモテる訳だが」

「喧嘩売ってるんですね」

「まあ聞け。正直、女性に好意を寄せられることには慣れていた。けど、自分から誰かをこんなに好きになったのは初めてだったから、まさかその相手も俺のことを……とは夢にも思わなかった」


……え……?

課長は何を言っているんだろう?
それじゃあまるで、課長も私のこと好きみたい……。
< 60 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop