惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
「……その逆」
「逆って? もしかして、はっきり『好き』って言われたとか? うわぁ、だったらものすごく羨ましい。というか、私も含めたグランツの女子社員全員を敵に回したね」
「ち、違うの」
慌てて右手をヒラヒラ振って否定する。
陽介さんが私を好きになることは絶対にない。
「実は金曜日に空き巣に入られたの」
「え!? 空き巣!? それで?」
目をまん丸に見開いた琴子は、その後激しく瞬きを繰り返す。
「盗られたのは下着だけだったんだけど……」
「うわっ、下着? なんて下劣な犯人なの。でもまぁ現金類が無事だっただけマシなのかな」
美しい顔をしかめた琴子にうなずき、その場に陽介さんが居合わせたこと、しばらく部屋を離れたほうがいいだろうと彼のマンションにその夜からお世話になっていることを話した。
「空き巣は別として、副社長のマンションに連れて行ってもらうなんて羨ましい話はないのに、どうしてため息なの?」
「副社長にキスを……」
「え!?」
盛大に驚いて動きの止まった琴子は、数秒後ゆっくりと口を開いた。