惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

でも、どうしてそんなに機嫌が悪いんだろう。店で待っていなかったから? メールを無視するような真似をしたから?

陽介さんがわからなくて戸惑い、ほろ酔い気分も冷めていく。


「ふたりでどこかへ行こうと思ってた?」
「……はい?」


ふたりって、もしかして森くんのこと?


「俺は邪魔だった?」
「そんなことっ……!」


陽介さんが邪魔だなんて。森くんとふたりでどこかへ行くなんて。そんなことを考えているはずがないのに。

車が信号待ちで止まる。切なくなるような眼差しを向けられて、どうしたらいいのか戸惑った。

……もしかして妬いてくれてるの? そんなはずはないと頭の中で打ち消しながらも、心はささやかな期待に揺れる。

なにも言えずに黙り込んでいるうちに、信号が青に変わった。静かに発進する車の中が、いつもとは違いなんとも言えない空気に包まれる。
そんな中、ふと心配の種が持ち上がる。
森くんは私たちのことをどう思っただろう。接点のなさそうな副社長がいきなり現れて私を連れ去ったのだから、きっと今頃混乱しているに違いない。みんなと合流した二次会で、大騒ぎになってるかな……。

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