惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
あっという間の一ヶ月
翌週の月曜の朝。
私は会社のパソコンに向かい、一心不乱にキーボードを叩いていた。それは、先週のミーティングで議題となったアルカディアリゾート軽井沢のアメニティの企画書で、エトワールの小池社長に提示することになっている。候補としていくつか上がった海外ブランドの特徴やグランツの見解を簡潔にまとめようと、私のデスクには各ブランドの資料が所狭しと並ぶ。
ワンランク上の非日常をコンセプトとするなら、やっぱり世界的にも人気のある高級ブランドがいいかな。海外のセレブが愛用しているものなら間違いがないかもしれない。でも、ここは敢えてオーガニックを素材としたブランドというのもありかも。
そうして無理やり頭の中を仕事でいっぱいにしているのは、余計なことを考えてしまうから。
この怪我が治るまでの猶予は、あと四日。陽介さんと身体を重ねた夜から、さらに膨らんだ想いは私の心を今にも占拠しようとしている。
憧れのままで済まないことは、本当はわかっていた。それなのに陽介さんのキスを受け入れ、求められるままに身体まで。
……違う。私だって、心のどこかでそうなることを望んでいた。陽介さんが私を本気で好きじゃなくてもいい。心が引き返せなくなることを知りながら、束の間の喜びには勝てなかった。
あと四日。残された時間のあまりの少なさに胸が苦しくならないよう、企画書の作成に神経を注ぐ。そうして二時間が過ぎた頃、椅子に座ったまま大きく伸びをした。