惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
なにか飲んで休憩しようかな。
事業企画部の部屋を出て、何台もの自動販売機が並ぶコーナーへ歩いている途中で、向こうから森くんが歩いてくるのが見えた。その顔を見て、金曜日の夜に変な場面を見られたことを思い出す。
あのあとの二次会で同期のみんなに話しちゃったかな……。
私の顔を見た森くんはハッとしたように目を見開いてから、通路の隅へ私の腕を引っ張った。
「この前の夜はごめんね」
「っていうか、香奈と副社長ってどういう関係なんだよ」
近くに誰もいないことを確認してから、森くんが声のトーンを落とす。
聞かれることはわかっていながら、その答えがすんなりと出てこない。
「どういうって……」
あんな場面を見れば疑うのも当然。
「付き合ってるのか?」
直球の質問にギクッとする。顔から血の気が引いていく気がした。