惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
確かに付き合ってはいる。でも、それはあと四日のこと。
森くんの目が私を探るように細められる。
「ま、まさか。違うよ、付き合ってなんて」
首を横に振って必死に否定する。
陽介さんに迷惑をかけるわけにはいかない。別れることが決まっているのだから、変な噂を立てられたら大変。
「二次会でみんなに話しちゃった?」
「いや。香奈に確かめてからがいいだろうと思って、香奈が副社長に連れ去られたことは、まだ誰にも言ってない」
森くんが口の堅い人でよかったと密かにホッとしていると、「田宮さん」と不意に声を掛けられた。人事部の佐々木さんだった。ストレートロングの髪に派手な顔立ちは社内でも目立つ。
話したことがない先輩社員だけに、瞬きをしながら「はい」と答える。
「副社長と付き合ってるの?」
森くんと同じことを質問され、再び鼓動が飛び跳ねる。咄嗟に森くんを見ると、“俺じゃないよ”というように顔の前で手をヒラヒラとさせた。つい疑ったことを目で謝る。
「い、いえっ」