惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
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翌日の日曜日は、気分を一新させようと部屋の大胆な模様替えを決行していた。落ち込みがちな気持ちを少しでも上向きにしたい。
午前中のうちに買ってきたカーテンやベッドリネン、クッションなどのファブリックを袋から一斉に出し、次々と交換していく。時間も忘れて夢中になっているうちに陽が傾いたことに気づき、電気を点けようとしたタイミングでドアフォンが部屋に響いた。
もしかしたらお兄ちゃんかな。
私を心配して今朝はホットケーキ、お昼にはお手製弁当を届けてくれた兄が、きっと夕食は外に出ようと誘いにきたのだろう。でも、模様替えは中途半端だし、まだそんな気にもなれない。断ろうと思いながらドアフォンの応答ボタンを押したところで、鼓動がドクンと大きく弾んだ。モニターに映ったのは兄ではなく、陽介さんだったのだ。
返事すらできずにそのまま押し黙る。
『……香奈、これはどういうこと』
陽介さんは私がマンションに残した手紙をカメラに押し付けた。私の書いた文字がモニターいっぱいに映る。
まさか、私を引き留めに……?
一瞬だけでも期待する自分の浅はかさに呆れる。そんなはずは絶対にない。