惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

役員室が並んでいるせいか、社長室のある二十七階はほかのフロアとは違う雰囲気に包まれている。凛とした静けさは空気まで澄んでいるように感じさせる。

ヒールの音を響かせないように足早で歩いてミーティングルームの前までくると、誰かが入った直後なのかドアがゆっくりと閉まるところだった。資料を小脇に抱えて咄嗟に手を伸ばし、扉枠を掴もうと指を差し込んだそのとき。


「いっ……!」


ものすごい痛みが指先から全身を貫いた。
どういうわけか突然扉が閉じられ、私は指を挟まれてしまったのだ。立っていることもできず、すぐに引き抜いた左手を胸に抱えその場にうずくまる。声すら出せない。


「大丈夫!?」


すぐに開いたドアの向こうから掛けられた声が私の頭に降る。


「はい……」


声を振り絞ってなんとか答えた。
本当は大丈夫なんかじゃ全然ない。とにかく痛くて痛くてどうにもならない。

慌てたように出てきた男の人が、私の前にひざまずく。

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