惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
私が言うのを躊躇っていると、副社長は「なんでもいいから言ってみて」と微笑んだ。
その言葉に心が突き動かされる。ダメならダメでいい。もともと高望みの願いごとだから。
決意を新たにして顔を上げ、副社長をおどおどと見つめる。
「……本当になんでもいいんですか?」
「その怪我は俺の過失だから責任を持って」
「どんなことでも、ですか?」
一字一句ゆっくりと噛み締めるように尋ねる。
でも、本当にいいのかな……。
無茶苦茶すぎるお願いごとが私を土壇場で迷わせる。
「俺にできることであればね」
副社長はわずかに首を傾げ、いったいなにを言われるのか警戒するように目を細めた。
そんな顔をされるととても言い出しづらい。でも、ここは迷う場面じゃない。こんなチャンスは二度と巡ってこないだろうから。
軽く深呼吸をして意を決する。
「私の彼氏になってください!」
胸の前で祈りを捧げるように両手を組む。