惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
嘘に逃げて、そのときばかり事態が好転したって、持続性がなければ結局同じなのだから。
副社長自ら病院に連れてきてくれたことだけで十分。
ところが、お礼を言おうと息を吸い込んだとき。
「ただし」
副社長が真顔で口を開く。
「ふりじゃなければいいよ」
「……はい?」
ふりじゃなければいい? それはどういうこと?
吸い込んだ息を吐き出してから、わからずに激しく瞬きをして副社長を見つめる。
「演技はできないから、ふりじゃなければ引き受けるよ」
「すみません、意味がわからないんですけど……?」
さっきと似たようなことを言われて、やっぱり理解ができない。頭の中はクエスチョンマークの大行進。
「田宮さんの彼氏になるよ」
「はい!?」