惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
兄と会う日程はまたあとで連絡することになり、私たちは揃って二十七階のミーティングルームへ急いだ。
ノックをして静かにドアを開けると、中はまだミーティングの真最中だった。
邪魔をしないように席に着き、資料を急いで広げる。
エトワールの小池社長に「大変申し訳ありませんでした」と頭を下げつつ、副社長はプロジェクターの横で説明をしていた岩崎部長とバトンタッチをした。
「工藤副社長、率直に伺いますが、集客の見込みをどのようにお考えでしょうか」
早速、小池社長の質問が飛ぶ。
「今回、建築が進められておりますアルカディアリゾート軽井沢は、“圧倒的な非日常感に包まれる、日本のラグジュアリーホテル”がコンセプトとなっております。価格は高めながら、現実を離れて極上のひとときを過ごせる空間を提供すること。これに尽きます」
エトワールは全国的に高級ホテルを展開しているが、今回のように大規模なリゾート施設を造るのは初めて。
「消費者の嗜好が多様化していく中で、宿泊先に対するニーズの変化も免れません。こちらをご覧いただければおわかりになるかと思いますが」