惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

そう言いながら、副社長がレーザーポインターでプロジェクターを指す。

画面は、私が作成した市場調査の動向へと切り替わった。副社長の足を引っ張るわけにはいかないと、それこそ自宅にまで仕事を持ち込み、満を持して作成した資料だ。


「安さを求める層と、より高級さを求める層のパーセンテージはほぼ互角。今後多様化していく宿泊需要の中で、どちらも取り込もうとするのではなく、ターゲットをより絞っていく必要性があると考えます。
日本国内でいわゆる高級にランク付けされているホテルのスイートタイプの客室の稼働率は、ここ例年上昇しております。つまりそれは、非日常を求める顧客の増加を意味しており、そういった顧客をより上質のサービスでもてなす空間をつくれば、集客は十分に見込めると考えます」


いっさい迷うことなく、明瞭な言葉で副社長が答える。凛として堂々とした様子を見ていると、社員である私まで誇らしくなる。


「なるほど。確かにホテルニーズの多様化は顕著になりつつあるようですね。民泊なども含めて、今後はさらにそう推移していくでしょうね」


小池社長も副社長の言うことに大きく賛同し、その後の説明にも聞き入った。そうしてミーティングが終わり、ブラインドを上げたことで部屋の中が一気に明るくなる。

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