惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

お菓子作りが好きな私は、クッキーなどの焼き菓子やケーキを作っては、普段から会社に持ってきて琴子を始めとしたみんなに配っている。さすがにこの左手では、当分それも無理だ。


「とにかくお大事にね」


そんな会話をしているうちに目的地のSHINYに到着した。

お店のスタッフにおすすめされた新メニューのアボカドバーガーが運ばれてくると、そのボリュームに琴子と目を丸くした。

ジューシーな肉厚パティの上にチーズ、さらにその上にベーコン。そしてスライスされた大きなアボカドが五つものせられている。


「すごいね……」


そう言わずにはいられない。かぶりつくことは到底無理だと諦め、とりあえずフォークを持ち、端から責めていくことにした。


「香奈のその手を見たら、お兄さん、卒倒しちゃうんじゃない? “俺の香奈の手がぁ!”とか言って」


想像ができるのが恐ろしい。決してオーバーな話ではないのだ。たとえば今、兄に連絡を入れて怪我を負ったことを知らせたならば、タクシーを飛ばしてここまでやってくるだろう。もちろん、公判のまっただ中なら話は別だけど。

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