惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

「でもね、もしかしたら過干渉はなくなるかもしれない」
「どういうこと? これまでの状況だと、そうなる道筋しか私には見えないんだけど」


確かにこれまでだったらそうなるだろう。朝から晩まで私の部屋に入り浸り、食事から掃除、洗濯という家事のいっさいを喜んで買って出る画が容易に浮かぶ。


「実はね、今朝、お兄ちゃんに『彼氏ができた』って言ったの」
「えっ!? 香奈、彼氏できたの!?」


カチャンと大きな音を立てて、琴子がフォークとナイフを皿に置く。興奮気味に肩を弾ませた。

琴子が驚くのも無理はない。なんせ彼女と知り合ってからの私には、恋愛の“れの字”もなかったのだから。

その美しさゆえ華麗なる恋愛遍歴を重ねる琴子と、恋愛のできない私はまさに対極にある。はたから見たら、どうしてこの取り合わせ?と首を傾げたくなるような私たちなのだ。


「できたような、できないような」


首を左右にゆっくりと傾けて、のらりくらりと返す。

事実だけを言えば、彼氏ができたことに間違いはないけれど……。

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