惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
彼氏のふりをお願いしたつもりが、期間限定とはいえ彼氏になってくれるなんて。しかも、あの工藤副社長が。
「……どういうこと?」
複雑な表情を浮かべる琴子に、兄が昨日恋人に振られた話を聞かせた。
もうこんなことが何度あったか数えきれないくらい、兄の失恋回数はすさまじいものがある。短期サイクルだから、多くて年に三回。私が原因で別れているなんてシャレにならない。
そろそろ本気で兄のシスコン包囲網から逃れなくては。
「でもね、そうしたら『彼氏に会わせて』って言われちゃって」
「……ごめん、ちょっとよくわからないんだけど」
琴子がテーブルの向こうからさらに身を乗り出す。上半身がテーブルにほぼ乗っているような状態になり、その勢いに気圧された私が椅子の背もたれにトンと身体を預けた。
「彼氏を作った、というか……」
そもそも“彼氏”と呼んでいいものなのかもわからない。