惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
「よかった。もしかして嫌われているのかと思ったよ」
私の反応が副社長にそう思わせたのだとしたら、とても失礼。
「嫌いだなんてことは決して……」
言葉でもはっきりと伝える。
副社長のことを嫌いな女性はいないだろう。
「それじゃ、好き?」
「えっ……」
直球で尋ねられて身体が硬直する。停止ボタンを押されたように動きの止まる身体。それに反して、心臓だけが動くことを許されたかのようにドクドクと脈を打つ。
ふと見上げると彼と目が合い、そこでまた大きく鼓動が弾んだ。
「ごめん。困らせるようなことを言ったね」
副社長はパッと破顔して私の頭をポンポンとあやすようにすると、車を発進させた。
その後はなんとなく会話を繋げないまま、私たちは兄と待ち合わせしているカフェの入っているビルに到着。わざわざ助手席に回って私を降ろしてくれた副社長は、さりげなく取った手を握ったまま歩きだした。