惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

いつも自信に満ち溢れた兄は、私が彼氏を紹介したことで完全に自分を見失っているように見えた。

一杯目同様にスティックシュガーを一本手にした兄は、思い出したようにテーブルに戻す。


「……それで、香奈とは今後どのように付き合っていくおつもりですか」


兄は今度こそブラックのままコーヒーを三口飲み、カタンと音を立ててソーサーにカップを戻す。お馴染みのブラックを飲んで気持ちが落ち着いたのか、いつもの兄の口調に戻ったように思えた。


「どのようにってどういうこと?」
「決まっているだろう? 結婚を見据えて付き合っていくのか、それとも一時の快楽なのかということだ」
「ちょっとお兄ちゃん……!」


結婚って! 快楽って! 言い方が極端すぎて恥ずかしい。


「大切な香奈を預けるんだ。そこは重要なポイントだろう。将来のことを考えていないのなら、香奈とは今すぐ別れてもらいたい」
「お兄ちゃん!」


椅子をガタンと鳴らして思わず立ち上がる。

どうしてそうなっちゃうの!

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