惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

“付き合っている”の前に“一応”という言葉が付くけれど。


「それじゃデートしよう」


デ、デート!

いきなり投げかけられた誘いに身体ごと心臓が飛び跳ねる。

私が副社長とデート!?

私のあまりの狼狽ぶりに副社長は「そんなに驚くことでもないだろう?」と笑った。


「と言っても、ちょっとしたドライブだけどね」


副社長が軽くウインクを投げてよこす。外国の人以外でそんな仕草の似合う人を初めて見た。

ちょっとしたドライブでもなんでも、副社長とデートができるなんて……。

願ってもないチャンスが舞い降りて、ドキドキと鼓動が加速していく。


「……いいんですか?」
「いいも悪いもない。彼氏に遠慮するのはおかしいよ」


取られた右手がギュッと握られ、「さぁ行こう」と引っ張られる。そうして私は、再び副社長の車の助手席にすっぽりと収まった。

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