惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
足が長くてストライドが広いから。
私がそう言うと、副社長が「あっ」と言ってチラッと私に視線を投げかける。
なにかな?と思っていると、「今、副社長って呼んだだろう」と顔をしかめた。
「名前で呼び合うって決めたよね?」
「それは、兄の前だけじゃ……?」
てっきりそうだとばかり思っていたのだけど……。
「違う違う。いつでもどこでも陽介で。まぁ会社ではさすがに無理だとしてもね。ほら、呼んでみて」
いかにも簡単なことのように言う。
さっきは兄の手前という建前があったからなんとか呼べたけれど、こうしてふたりきりになると構えてしまう。
「言わないとキスするよ」
「えっ」
思わず身体を窓へ寄せると、「そんなに嫌がられるとショックだな」と副社長が眉尻を下げた。
「あ、あの、嫌とかじゃなくて、いきなりそんなことを言われて驚いただけで!」