惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

副社長を不必要に傷つけてしまった!と焦って訂正する。
本当にそうじゃない。副社長を嫌がる人はいるわけがない。

私があたふたとしていると、副社長からクスッと笑みが漏れた。


「ごめん、冗談だよ」
「あ、そ、そうですよね……」


なんだ。びっくりした。そうだよね、副社長が私に本気でキスしようと思うはずがない。私ってば自意識過剰だ。


「じゃ、呼んでみようか」


それは冗談じゃないらしい。
あんまり引っ張っても、ただ単にもったいぶっているようにしか見えないかもしれない。私はそこまで値の張る女ではない。


「……陽介さん」


勇気を出して呼んだ途端、顔が耳まで熱くなる。兄の前では気を張っていたせいか、そこまで恥ずかしくはなかったのに。


「はい、よくできました」


子供のように褒められてくすぐったい。

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