惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

私の口から大きなため息が出てくる。言葉もないというのはこのこと。私のことが原因で兄が振られるのは、これで何度目だろう。

妹の私が言うのもおかしいけれど、兄は容姿に関して非の打ち所がない。いつでも微笑みを称えた甘いマスクに、中学高校と野球で鍛えた身体は、百八十センチをゆうに超える高身長。おまけに頭脳明晰で司法試験を一発合格した弁護士でもある。

顔良し、スタイル良し、頭良し、おまけに収入も高い。
女性が憧れる要素をすべて兼ね備えた兄は、それこそ子供の頃からモテモテだった。成績は学年で常にトップ。走れば速く、類まれなる運動センスで、いろんな部活から引く手数多だった。

ただひとつの難点。それが、妹を溺愛する強烈なシスコン体質だということ。

恋人はすぐにできるのに、それがネックになり、付き合い始めてしばらくすると振られてしまう。デート中であっても妹にメールを送り、話題は妹中心。振られるのも当然と言えるだろう。

それに対して妹の私は、どこをどう見ても平凡。もうちょっと背が高かったら。もっと目が大きかったら。もっと鼻筋が通っていたら。もう少しぷっくりと色っぽい唇だったら。そんな要望だらけの容姿をしている。

兄と同じ遺伝子だと思えるのは、栗色の髪の毛だけ。勉強も運動も驚くほど平均点なのだ。

自分の要素はこの際棚に上げるけれど、兄の溺愛の余波で私は恋愛運になかなか恵まれない。

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