惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

車はインターチェンジを抜けて国道をひた走る。初めて訪れるアルカディアリゾートの建築現場に心が弾んだ。

約十分後、一段と緑が色濃くなったところで大きな立て看板が見えてきた。“アルカディアリゾート建築中”との文字になんだかワクワクしてくる。

その看板を通り過ぎると、何台もの車が停車していた。土曜日の今日も現場は休みなく動いているようだ。

車を降りると、工事特有の鉄筋がぶつかりあう音が聞こえてきた。すぐそばに建つ小さなプレハブ小屋は守衛室か。陽介さんはひとりでそこへ向かい、出てきたときには黄色いヘルメットをふたつ抱えていた。


「綺麗な格好しているのに悪いけど、これ被ってくれる?」


手渡されたヘルメットを頭に乗せると、陽介さんが顎紐を装着してくれた。


「ありがとうございます」
「なかなか似合ってる」
「……それは褒めてるんですか?」
「立派な褒め言葉。かわいい」


ヘルメット越しに撫でられて、頭がゆらゆらと揺れる。
不意打ちでかわいいなんて言われて目が泳いだ。

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