惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
◇◇◇
瞼に感じる明るい光が、私を眠りから呼び覚ます。そっと目を開けてみれば、そこは今日、陽介さんと待ち合わせをした駅のロータリーだった。
「すっかり寝入ってしまってすみません」
窓にもたれていた身体を起こし、急いで陽介さんに謝る。高速に乗ってしばらくしたところから記憶がないから、二時間も寝ていたことになる。
「気にすることはないよ。無理に連れていったのは俺だから」
優しい言葉が嬉しい。
「香奈の自宅を知らないから、俺のマンションにお持ち帰りしようかと思ったんだけど、さすがにそれは香奈を困らせるかと思って」
確かにいきなりそれは困る。ロータリーのほうを選んでくれた陽介さんに「ありがとうございます」と頭を下げた。
「香奈の自宅を教えてくれない? 送るよ」
「いえ、そこまでしていただくわけにはいきません。ここから電車ですぐですので」