惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
いざ降りようとバッグを持つと……。
「彼女に遠慮されるのって傷つくんだけど」
陽介さんがシュンとして本当に傷ついたような顔をする。“彼女”という言葉に心拍が乱れる。
「……いいんですか?」
「俺がそうしたいんだよ」
そこまで言ってもらって断れるほどの強い精神力が私にはない。
「……それじゃ、お願いします」
マンションの大まかな場所を伝えると、陽介さんは再び車を発進させた。
「疲れてない?」
「大丈夫です」
「左手は? 痛みが出たりしてない?」
「それも大丈夫です。私よりも陽介さんです。長時間の運転で疲れさせてしまって……」
軽井沢まで往復運転で疲れないわけがない。
「いや、香奈と一緒にいたからまったく。かわいい寝顔を見られたし」
「わ、私の寝顔なんて……」