惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
かわいいはずがない。口は開けていなかったか、目はきっちりと閉じられていたか、今になって心配になる。かといって、眠った過去を消せるわけでもない。
「本当にすみません」
謝る以外になかった。
「香奈、ひとつだけ言いたいことがある」
「なんでしょうか」
なにか気に障ることでもしちゃったかな。だとしたらなんだろう。
これまでの自分の行動を一瞬のうちに思い返してみる。けれど、すべてが当てはまりそうに思えて、ますます弱気になる。
「香奈はもう少し俺に甘えて」
「はい?」
「俺に気をつかっておどおどすることはないし、遠慮なくなんでも言ってほしい」
おどおどしているつもりはないけれど、副社長という肩書きが恐れ多いのはある。でも、遠慮なく希望を言ったからこそ、期間が限られているとはいえ密かに憧れていた陽介さんと付き合えることになったわけで……。
「遠慮をしているつもりは……」
「香奈はそうなのかもしれないけど、俺からみたらかなり線を引いてるよ」