惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
「田宮さん、なにかありましたか?」
「あ、いえ、すみません……」
これから陽介さんがここに……。想像するだけで心臓は早鐘を打っていく。
仕事中なんだから落ち着いて。
胸を撫でて鼓動を宥める。
メンバーの手元に資料を配っていると、ミーティングルームのドアが開けられ、そこから陽介さんが入ってきた。誰よりも早く目が合い、彼の目元に微かに笑みが浮かぶ。それにうまく応えられずに、私はそそくさと俯いた。
「みなさん、お待たせしました」
陽介さんの言葉を受けて、岩崎部長が「では、始めさせていただきます」とスタートを切った。
資料には、ヴィラの完成予定図が描かれ、施設内に必要な備品類も記載されている。軽井沢ならではの落ち着いたベージュとブラウンを基調とし、空の景色や雄大な浅間山の眺望、樹木を生かした外構など、その土地の原風景を大事にして設計している。
「では今日は、施設内の備品や設備、それからアメニティなどについて話を進めてまいりましょう」
アルカディアリゾートに関しては、エトワールからほぼすべての決定権がグランツ開発に委ねられている。