惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

それは、グランツ開発に対する期待値が大きいということにほかならず、だからこそ失敗があってはならない。

岩崎部長の合図で部内のメンバーが早速口を開く。


「敷地面積はおよそ一万五千坪。全室スイートタイプのヴィラは約四十棟。造成された川岸に現在建築が進められています」


自分で作成した資料を改めて見ていて、ひとつ気になることを発見した。
これまでのアルカディアリゾートは広くても一万坪。軽井沢はどこよりも広くなる予定になっている。


「すみません、ひとつよろしいでしょうか」
「はい、田宮さん、どうぞ」


部長に促されて口を開く。


「現在、施設内の移動手段についてはなにも触れられていませんが、これだけの規模ですとなにかしら考えたほうがいいと思われます」
「全体を歩くと約十五分から二十分の広さとなっていますので、それほど心配はしてはいないのですが……」


資料を確かめながら、部内のメンバーが答える。

確かにそのくらいなら十分に歩ける距離ではある。でも……。

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