惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

「そういった方たちのためにカートなどの専用車を配備する必要があると考えます」


そこで再び陽介さんと目が合う。お礼の意味も兼ねてこっそり微笑むと、彼から極上の笑みが返された。


「そうですね。では、そういった方向で進めましょう」


資料に手書きで“カート手配”と書き記した。


「ほかになにか意見はありませんか?」
「ホテルの部屋のアメニティのブランドですが……」


そうして着々と話し合いは続き、区切りのいいところで終了としたのは退勤時間まであと五分を切った頃だった。みんなに続いてミーティングルームを出ると、同期の森くんとばったり会った。


「手の具合はどう?」
「ギプスをしているからわからないけど、特に変わらないかな」
「俺さ、子供の頃、骨折に憧れたんだよね」
「骨折に?」


どうしてそんなことに憧れるんだろうと、クスッと笑いながら聞き返す。

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