惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

「お兄ちゃん、ちょっと話したいことがあるの」


伸びてきた兄の手をやんわりと避け、ホットサンドを皿に戻す。椅子に座り直し、膝の上に手を揃えた。


「ん? そんなにかしこまって、いったいどうしたというんだい?」


兄は背筋を伸ばした私をニコニコと、まるで小動物でも愛でるかのような優しい眼差しで見つめる。


「……あのね、実は」


兄が妹離れするには……そして私たちが幸せになるためには、もうこれしかない。

深く息を吸い込み、お腹に力を入れる。


「私、彼氏ができたの」
「……え?」


口角を上げたまま、兄がきょとんとする。


「彼氏が、できました」


聞き返した兄に、よく聞き取れるようにゆっくりと繰り返した。

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