漆黒
塾の先生は男の先生でした。
おじさん、と呼んでもいいくらいの年齢だったと思います。
直接的、といいますか、端的にいいます。
私はこの先生に犯されました。
心は冷えきっているのに身体だけ熱くて、泣き叫んでいたことくらいしか今は覚えていません。
ですが、その日から私が「周りの人たちと私は違う」と思い始めたのは確かです。
そういえば、その時のテストの結果が散々なものであったことは言うまでもありません。
それなりに成績が良いのをキープしていた私がいきなり点数を落としたものですから、担任も親も心配していましたが何も話すことはありませんでした。
原因を話すには、あの出来事を話す必要がありますから。
それだけはどうしても避けたかったのです。
それを話すだけの勇気も、自分の傷を晒すだけの覚悟も私にはなかったのです。
ただ、全てに疲れ切りました。
ですが、それを隠し通すだけの技量は持ってましたから、必死で周囲の人たちを誤魔化し続けました。
気付かれないようにすることで強がりたかっただけなのです。
元々、私は強い人間ではありません。