フツリアイな相合い傘
だけど私は清水さんの言葉で、雨に濡れたショコラや柵の向こうから警戒心丸出しで睨んでいたチョコの顔を思い出してた。
そのとき、ちょうど女子トイレから出てきた清水さんとその友達が、廊下で棒立ちになっている私の存在に気が付いた。
私の顔を見た瞬間、清水さんの友達の方の顔が「あっ」と気まずそうに歪み、そうしてふたり同時に口を閉ざす。
不自然に私から視線をそらして避けるように通り過ぎると、ふたりで肩を寄せ合ってコソコソ話し始めた。
「聞こえたかな……?」
「平気でしょ」
聞こえてるよ。
心の中で、ひとりごとみたいにつぶやく。
しばらくそこに立ち尽くしたまま、私は胸のざわつきをなかなか落ち着かせることができなかった。
ぐるぐると胸に渦巻く苦い感情。
今もし誰かに軽く触れられでもしたら、それだけで泣きそうだ。