フツリアイな相合い傘
また清水さんに見られているかもしれない。
そう思ったら、いつものように佐尾くんに傘を差し出せない。
「今日は他の人にいれてもらって。佐尾くんなら他にも友達いっぱいいるでしょ?」
「西條さんだって友達じゃん」
私が抵抗しても、佐尾くんは笑いながら言葉を返してくる。
折りたたみ傘の柄をきつく握りしめたまま離さない。
「帰りに寄りたいところがあるの」
「じゃぁ、その途中までいれてくれたらいいよ」
「でも、途中から濡れるよ?」
「途中まででも濡れないなら大丈夫」
佐尾くんがにこりと笑う。
「でも……」
今日は結構雨が降っているのだ。
途中まで、なんて……
そんなのほとんど私の傘に入っていく意味なんてないのに。
どうして佐尾くんがそんなにも私を誘いかけてくるのかがわからない。