フツリアイな相合い傘
ひとつの傘を握り合ったまま昇降口の軒下で押し問答を続ける私と佐尾くんを、行き過ぎる生徒たちがちらちらと見ていく。
他の人たちの遠慮のない視線に晒されながらただ困惑していると、突然よく通るはっきりとした女子の声が聞こえてきた。
「佐尾ー。何してんの?」
その声がすぐに清水さんのものだとわかって、私の肩はびくりと震えた。
「清水……」
清水さんは、ひとつの傘を握り合っている私たちを一瞥したあと、すぐに私の存在なんて見えていないかのように佐尾くんににこりと笑いかけた。
「どうしたの、佐尾。頭、すごい濡れてるよ」
清水さんが笑いながら、馴れ馴れしく佐尾くんの明るい茶色の髪に触れる。
「あ、佐尾、もしかして傘忘れた?いれてってあげようか?途中まで一緒だし」
「いや……」
困ったように眉を垂れる佐尾くんの腕を、清水さんが強引に引っ張る。